祭りは地方移住者を増やすのに役立つか?

地域振興・定住者を増やすのに「祭り」は役立つのか?

そんなテーマで先日、祭りBarという勉強会が京都で行われ、FB友達からのお誘いがあって行ってきました。

学習会というより、こんなふうにお酒を飲みながらわいわい語り合おうという楽しい催し。15人の定員は満席で、主催者の計らいで混ぜてもらったという感じでした。

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さすが京都らしく「祇園ばやし」なる名前のお酒もありました。

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市役所の地域振興系の職員や、NPOの職員、祇園祭の山鉾保存会で活躍されている人など、テーマを語るにふさわしい方が集結しておりました。

一応、今回のBarでは「中での議論は口外しないように」というルールがあったので、代わりに、表題のテーマについて私自身が考えていることについてブログで書いていこうと思います。

「祭り」は移住者を増やすのに役立つのか?

本当に祭りが移住者増加に役立つなら、岸和田は今ごろ「政令指定都市」になってるはず(笑)。

私も、だんじりは大好きなので、毎年のように岸和田に行ってます。
祭りが定住の魅力に本当に貢献するなら、少なくとも私のような仕事や、アフィリエイター・デイトレーダーなどのように「ネット接続があればどこでも仕事できるよ」という人が真っ先に岸和田へ移り住むに違いありません。

幼少期に岸和田で暮らしていた「Uターン組」は別として、岸和田に暮らしたことがない私のようなIターン組が今さら岸和田に行ったところで、基本的に「寄付金を出す」以外に祭りのためにできることは何もないといってもいいでしょう。(何かあったらこっそり教えてください)

※岸和田やその周辺のだんじり祭りの場合、子供会>青年団>拾五人組/参拾人組>若頭>世話人 といった完全年齢別階層組織になっていて、私みたいにオッサンの年齢になると世話人組織へ加入だけど、祭りのことを何も知らない人間が何をお世話するの?、ということになりかねません。

ご縁があって岸和田に移り住むことになっても、あえて「だんじりのない町」の家を探すかもしれません。(笑)

それどころか、かえって「祭りが移住者増加にマイナスの効果をもたらす」ことすらありうるわけでして。

観光客として年に一度だけ祭りを見に行くのならともかく、移住するとなれば話は別でして、祭りが本当に移住のきっかけとなるなら、「電気と高速ネット回線があれば世界中どこでも仕事できる」という人は、真っ先に岸和田に集結するはずです。
現に、祭りとネット回線充実と海辺の町という合わせ技の魅力で移住者を増やしている、徳島県日和佐町とか沖縄県糸満市のような実例もあります。

で、祭りがきっかけで人口は本当に増えるものなのか?
その分かりやすい例として、だんじりが全国的に有名になる前後で、岸和田の人口は本当に増えたのか?

調べてみました(笑)。
念のため、隣接する泉大津市と貝塚市も比較対照で一緒に調べてみました。

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確かに岸和田市の人口、約185000 → 200000人に増えてはいますが、泉大津も貝塚も同じように1万人ずつ増えています。泉大津も貝塚もだんじりが盛んな地ではありますが、岸和田ほどの全国的な知名度はありません。
だんじりが目当てで移住した熱狂的祭り好きもいるかもしれませんが、だんじりだけで人口が増えたと考えるには無理があります。

さて、本日のテーマは、かえって「祭りが移住者増加にマイナスの効果をもたらす」ことすらありうるわけ、を考えてみたいと思います。

祭りが移住者増加にマイナスの効果をもたらすかも?

1.地元の人でも、祭りに加われない人はいる

地元で祭りに打ち込める人の多くは、地元での「勝ち組」である。
地元で愛されている老舗商店/企業の子息や、さっさと就職して早々に結婚・子育てする「マイルドヤンキー」な人が、祭りの中心的人物になっていることが多いです。

そのためにはまず、ガキ大将や学園のアイドルなど、地元で「スクールカースト」の上位にいることが必須条件となります。
いじめられっ子・運動神経がにぶい人・引きこもり・転校生など、スクールカースト下位の人はそのまま大人になっても地元では浮かばれないので、大きくなったら可能な限り定住せず就職や進学などで都会へ移住しようとするはずですから、地元の祭りに打ち込む可能性はおのずから低くなるでしょう。

ここで、地元で祭りが好きであっても、何割かの人は脱落します。

2.Iターン移住希望者にとって、祭り参加はハードルがすごく高い

Iターンの場合、祭りに入りたいと思っても、地元の祭りのしきたりや不文律を知らないので、いきなり祭りに入れてもらえないことが多いです。入れても「しんどいばかりで実りの少ない裏方作業」を押しつけられることもあります(そういう役割も祭りには大事ですが、本音では美味しい花形の役が将来得られる可能性がほしいもの)。

また、祭りに加わるには、なぜか地元消防団への参加がセットとなって求められるケースも多いと聞きます。消防団は突然呼び出されることも多いので、地元の役場や自営業で働いている人以外が参加するのは困難といえるでしょう。

Uターンならまだいいのです。地元の祭りのしきたりや不文律を子供の時に身につけている人は、大人になってもすっと戻れる可能性は高いはずです。

3.祭りが目当てで移住したい人は、たいてい目が肥えている

これも言われてみれば当然ですが、祭りが好きという人は、自らが知っている祭りのすばらしい面を知っていて、移住するからにはそれ以上のものが得られる期待をもって移住を希望するもの。
関西在住なら祭りといえば祇園祭・天神祭・岸和田だんじり祭りクラスのものを想像してしまうものでしょうし、関東在住なら三社祭・神田祭・深川祭クラスのものを想定したくなるもの。

厳しいことを言うなら、

「あなたの地域の祭りに、浅草や岸和田の人がわざわざ見に来ますか?」

この質問に堂々とイエスと言える地域でないと、祭り目当ての人を引きつけるのは難しいといえますし、イエスと言える祭りだと逆に、外の人間が入り込む余地は少ないはずです。祭りの運営組織がすごく厳密だったり、よそ者が入らなくてもというプライドがすごく高かったりで、かえって祭りが移住の妨げになることでしょう。

では、どうすればいいのか?

移住促進ということでいえば、祭り以外の面で魅力を増やしていくことを考えていくほうがいいでしょう。暮らしやすい・働きやすい・よそ者でも入っていきやすいなどのメリットを思い切って打ち出せるかどうか。そこがキーポイントとなるでしょう。
「無医村にやってきた医師が任期半ばで逃げ出す」ような閉鎖的なムラだと、将来は厳しいと言わざるを得ないでしょう。

田舎の魅力を再発見するには、一度都会に出て短い期間でもいいから暮らしてみる・働いてみるというのも効果的でしょう。客観的に自分の地域の魅力が分かるはずです。

では祭りは移住促進策として全く無力化というとそうではなく、定住したひとにとっての祈りや娯楽であり、住んでいる場所の魅力を高める役割を果たすので、地元で暮らすひとにはがんばってほしいところですね。

◎参考ページ:
まだイベントで消耗しているの?

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