大阪→京都 21420円 大回り乗車片道切符の旅

最初に言っておきます。今回の旅も、あくまでも合法です。
大回り乗車といっても今回は、「琵琶湖一周120円の旅」「房総半島一周140円の旅」のように、初乗り切符を買って大都市近郊区間を1日完結でぐるっと回るだけのものではありません。そちらをご覧になりたい方は、こちらのページをどうぞ

NHK「あさいち」で鉄道旅について特集していたそうなので、この話題を。

大阪から京都までの片道切符、ありえない高額な乗車券(しかもデカイ)になってますよね。
※ちなみに大阪から京都まではJRの通常運賃で560円です。金券ショップで売ってる昼得きっぷなら、1枚400円前後が相場でしょう。

切符券面の経由地を見ると、東京とか青森なんて文字が見えてますよね。大阪から京都へ普通に行くのにそんなところを通るわけがないのに(笑)。
実は、こういった経路です。線路や都市の位置関係がアバウトなのはご容赦を。

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※当時は東北本線盛岡以北も、北陸本線金沢以北も、第3セクターではありませんでした。
※現在では制度が変わっていて、同じ切符を買ったとしても京都市内ではなく山科の単駅指定になるそうです。

なぜこんな複雑な経路の切符を買うのか、お前はマニアか、ふつうに往復切符を買えばいいじゃないかと言われそうですが、これには大きな実用的理由があります。それは、

「長距離であればあるほど、1キロあたり単価が安くなる」

これを「遠距離逓減制」といいます。JR西・東・東海の1キロあたりの運賃は、

初乗(3kmまで)140円 46.66円/km
500kmまで  7,880円 15.76円/km
1000kmまで 12,310円 12.31円/km
2000kmまで 19,870円 9.935円/km
3000kmまで 27,540円 9.18円/km

※2016年1月現在・幹線の場合・税込

と、長く買えば買うほどお得というのが分かっていただけるかと思います。

※余談ですが、戦前の南満州鉄道・朝鮮総督府鉄道などでは遠距離逓減制がなく、例えば1000キロまでの運賃が10キロまでの運賃の100倍なので、このような大回り片道乗車券を買うメリットはありませんでした。

一応この大回り片道切符のルールを簡単に説明します。

片道101km以上であれば、どこの駅でも何度でも途中下車可(ただし後戻り不可)
 後戻りできないところが、乗り放題系フリー切符との違いです。
ただし大都市近郊区間で完結する片道切符は途中下車不可
 東京から松本は明らかに101km以上ですが、このルールのために途中下車できません。1駅先まで買うとか、他の路線を回るとか、工夫しましょう。
有効期限は距離に応じて2日以上あり、有効日数内であれば途中下車可
 距離(km)÷200 + 1 = 有効日数(小数点以下切り上げ)
 例) 2000km : 2000/200 + 1 = 11(日間有効)
同じ駅や路線を二度通るのは不可
 一筆書きでも同じ駅を2度通るのはアウトです。同じ駅に着いた時点までしか片道切符は買えません。
上記切符の例でいえば、大阪から京都(山科)という切符は買えますが、京都(山科)から大阪までという切符は買えません(山科で打ち切りとなります)。
途中下車したあとの後戻りは不可
 東京から大阪の片道乗車券で静岡で途中下車したあと、熱海に戻って「途中下車」はアウトです。別途静岡から熱海の切符を買いましょう。
 同じ理由で、大阪から東京の切符で新幹線に乗り、新横浜乗換え、横浜で「途中下車」しようとすると「東神奈川から横浜」までの往復運賃を別途徴収されます。
第3セクター鉄道を挟む場合、JR区間の距離を通算し、第3セクター区間の運賃を足す
 今だと旧東北本線の青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道とか、旧北陸本線の3社などですね。
元の駅に戻るのは可
 以上の一筆書き条件を満たせば、東京から東京とか山科から山科いう「片道切符」も実際に買えます。

で、この乗車券の旅をしたときは、

・品川で途中下車、東海道400年記念祭の神輿を見る
・上野から青森まで、寝台特急「はくつる」に乗車
・青森で途中下車、酸ヶ湯温泉で2泊3日の湯治
・青森で、ニフティ時代のお友達とオフ会してもらう
・青森から大阪まで、特急「白鳥」に乗車(京都から大阪の乗車券は別途購入)

こんな目的の旅でした。
当時の写真が何も残っていないのは、「はくつる」の車内で寝台のうえに置いていたデジカメを置き引きされたからです。そういった治安に問題あるB開放寝台も、この春廃止予定の急行「はまなす」が最後みたいですね。

さて、うちのブログ、一応「お祭り」ネタのブログだということで、お祭りに役立つ情報を少し載せておきます。

例1)東京の方が、京都の祭りを見たい(金沢や富山の祭りも可)

東京→ 東京
経由:東海道,山科,湖西,北陸,金沢,北陸新幹線
JR線営業キロ: 1177.9km 普通片道運賃:大人 13820円 有効期間:7日

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●ポイント
・主に熱海、名古屋、金沢、富山、長野などで途中下車できます。観光や出張などにご活用ください。
・京都で途中下車するときは、山科から京都の切符が別途必要です。新幹線で京都までダイレクトに行く場合は、この切符と同時に山科から京都の切符も窓口で発券してもらえば面倒は少ないでしょう。
・片道切符のルール「逆方向には戻れません」
もし先に長野や金沢などに立ち寄りたい場合は、切符を買うときの経路も逆に指定する必要があります!「北陸新幹線・金沢・北陸・湖西線・山科・東海道」で。
・大阪の方でしたら、「東海道(新幹線)・東京・北陸新幹線・北陸・湖西線」で大阪から山科までを買うことになります。例によって逆戻り不可ので、切符を買うときは計画的に。
・新幹線などの特急券は別途必要です。エクスプレス予約のカードを持っている人なら、それでe特急券だけを買うとお得です。
・参考までに東京→京都の片道運賃は大人 8210円です。北陸新幹線のバカ高い特急料金を考慮しても、単純往復とほぼ変わらず。 こんなページも。「漫画で学ぶ「大阪-東京往復ならほぼ同料金で北陸新幹線にも乗れて金沢へも行けるよ」」

例2)東京の方が越中おわら風の盆を見たい

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東京→東京
経由:北陸新幹線,富山,高山,岐阜,東海道
JR運賃計算キロ: 1036.6km 普通片道運賃:大人 12640円 有効期間:7日

●ポイント
・風の盆は高山線の越中八尾で下車
・ほぼ例1)の応用編とも言えます
・長野など北陸新幹線の駅のほか、高山や名古屋などで途中下車ができます。
高山などを先に巡りたい場合は、逆方向(経由;東海道・岐阜・高山・富山・北陸新幹線)で買います。

例3)東京の方が東北夏祭りのはしごをしたい

東京→仙台
経由:東北(新幹線),新青森,奥羽,仙山

●ポイント
・昔は東北ワイド周遊券などがあって鉄道で東北夏祭りを巡回するのは楽でした。(もともと当時の国鉄は周遊券を売るために、現在の東北夏祭りの仕組みを整えたともいえる)
しかし現在では周遊券も、後継となる周遊きっぷも廃止され、この時期全国の人が使えるフリー切符の類は、普通列車しかのれない「青春18きっぷ」くらいになってしまいました。そこで、オーソドックスに大回りの片道乗車券を使います。
・祭りの日程は、
盛岡さんさ踊り 8月1~3日
青森ねぶた祭り 8月2~7日
弘前ねぷた祭り 8月1~7日
秋田竿灯まつり 8月3~6日 
仙台七夕まつり 8月6~8日
山形花笠まつり 8月5~7日
なので、順番としては1日ごとに盛岡>青森>弘前>秋田>山形>仙台といけば順番通り廻れることになります。
・山形で「途中下車」する場合、経路外となるので別途運賃が必要です。
・実際この経路で祭り巡りする場合、鬼門となるのが秋田から山形方面への移動です。昔とは違い秋田から山形・上野方面へ直通する特急や急行はなく、最悪の場合は何時間も普通列車に乗り続けるはめになります。そこで、こんな解決法もあります。

 ・安さを優先するなら、切符を東京から秋田までにして(経由:東北(新幹線),新青森,奥羽)、秋田から山形・仙台方面へは青春18きっぷで各駅停車の旅を。

 ・速さを優先するなら、切符を
  東京から盛岡まで(経由:東北(新幹線),新青森,奥羽,秋田新幹線)と
  盛岡から東京(経由:東北(新幹線),仙台,仙山,山形新幹線)
  の2枚にして、秋田からは仙台まで「こまち」で一気に行きます。仙台から山形までは仙山線の電車で約1時間。帰りは山形から山形新幹線で。

特に東京や横浜近辺の方でしたら、工夫次第でいろんなところへお得に大回り乗車券の旅が楽しめそうですね。
ただ、120円の大回り乗車以上にややこしい仕組みなのと、ヘタをするとJRのみどりの窓口職人ですらこうした大回り切符の発券に手間取る場合があります。
最初は詳しい人にアドバイスを得ることと、時間には余裕をもって発券するとともに、近畿地区の場合でしたら電話予約センター(5489ダイヤル)の活用などもご検討ください。

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